特にイメージを持っていたわけではないのですが、仕事柄印刷会社に伺う機会が多かったので、初めて製本会社に伺った時は、人が多いなぁ~という感想を持ちました。
印刷会社では大きな印刷機でも1~2人しかついてなくて、工場の広さの割に人が少なかったのですが、製本会社には人も多く、想像以上に手作業の部分も多いというのに驚きました。
普通はデザイナーも印刷の立ち合いくらいで、製本まで立ち会うということはないと思いますが、ほんとは行った方がいいですよ。現場で許容範囲の確認もできますし、相談しながらできるのでトラブルを未然に防ぐためにもその方がある意味お互いに効率的だと感じています。また、企画の段階で製本加工のプロに相談できると、いろんなアドバイスもいただくことができ、より面白いものが実現できると感じています。
考えてみたんですが・・・私は製本や印刷は絶対的に好きなので、考えても理由がわからないんです。理屈抜きで好きなんですよね(笑)。
もともとは本を読むのが好きだったのですが、こういう仕事について本を作るようになり、自分で紙や印刷・製本を手配するという環境でいろんなことを知るようになって、どんどん興味が湧いてきて、知れば知るほど面白い!と思うようになりました。
面白い製本加工の本などを見ると、読まなくても買わずにはいられない!海外に行くとトランクに入りきれないほどの本や紙製品を買ってきてしまうので、家はたいへんなことになってるんですよ・・・。
それに、好きになると周りにも詳しい人がどんどん集まってきて、そうするとますます楽しくなって・・・。ですから仕事もやることがたくさんあって、大変だと思うことはあっても、つらいなぁと思ったことがないんです。
よく、製本会社の方から「やりたいことがあったら言ってください!言ってもらえればなんでも実現できます!」といわれるのですが、よほど製本や印刷の知識がないと具体的な話をするのは難しいと思うんですよ。ハードルが高い。そんなに難しいことでなくてもこんなことができる、あんなことができるということを発信してもらえれば、そこを起点にそれならこういうこともできる?という話に発展する可能性は増えると思うんです。こんなことあたりまえ・・・ということも、発想する側は知らないことが多いはずですから、製本会社の方々には新しい製本加工のサンプルを作って提供するとか、是非情報の発信をしていただきたいと思います。
また、いろんなイベントを通して製本や印刷にすごく興味がある若者が多いと感じています。その一方、欲しいと思う情報に飢えているとも感じています。デザインを勉強する学生は多いのに、知りたい情報を得る場所があまりないようで、製本や印刷に関するトークショーや、工場見学会などを開催すると毎回たくさんの参加があります。業界としてあるいは各企業で工場の見学会や様々なイベントなどを企画して製本をもっと広げる活動をしていただけるといいのではと思います。
それから、最近自費出版、同人誌のニーズがとても高くなってきていると感じていて、個人的に500部くらい作りたいというニーズが想像以上に多いんです。同人誌のイベントなどにもたくさんの人が集まっています。個人相手の仕事は手間もかかり大変だと思いますが、そういうことに丁寧に対応してくれる会社があるといいなぁと思います。個人の方はお金がかかっても納得のいくものを創りたいと思っている人が多く、採算度外視ですよ・・・。印刷はプリンタやオンデマンド機で手軽に自分でできるようになりますが、製本だけは自分ではうまくできないはず。そういったニーズに応えることも必要かなと感じます。
ただ印刷して、ただ製本しただけの本だと電子書籍の方が検索性がいいとか、そういう話になってしまいます。少しだけ手間をかけ面白いものができるなら、またそうしていかないと紙媒体全体の市場も小さくなってしまうと思うんです。こんなに面白いものをなくしてしまうのはもったいない!ぜひ製本業界の方々に頑張っていただきたいです。
おもしろいモノを創りたい人はたくさんいる、一方それを実現できる人もいる。だけどつながらない・・・「デザインのひきだし」がきっかけになればと思っています。今回作られたポータルサイト「製本のひきだし」にも“つなぐきっかけ”を大いに期待しています。