製本お役立ち便利帳

背標・背丁とは何ですか、またどうしても必要なのですか?

1. 背丁、背標とは何か

(1)背丁とは

背丁とは、刷り本を区分するために入れる“品名、巻数、月号、折り名”のことを指します。製本工場には常に多くの刷り本が集積し、一見して見分けが付かないような類似した折り丁が、隣接して置かれていることもあります。これらの混入を防ぐためには、背丁は欠かせない目印となります。

(2)背標とは

背標は、折り丁を丁合いした時に、乱丁や増・落丁の有無を目視確認するために折り丁の背に付けられる「スミベタの潰し」です。この背標は背丁とともに、手折りや折り機で刷り本を折る時の裏折りを防ぐ役割も果たしています。近年はほとんどの丁合い機に絵柄検知器が設備され、以前に比べれば、乱・増・落丁の発生をかなり抑えることができるようになりましたが、絵柄検知器は時おり誤作動を起こすため、100%頼ることはできず、目視による検査は欠かせません。特に背標は以下のような使われ方がされており、乱・増・落丁の防止のための重要な品質管理手段となっています。

図表1 背標による載せ作業管理 ①丁合いボックスに折り丁を載せた時に、背ベタの位置をチェックして、他折り混入や載せ違いのないことを確認する。

図表2 階段状に並んだ背標 ②丁合い直後に一定間隔で抜き取りを行い、背標の目視検査を実施する。

2. 背丁・背標の入れ方

背丁・背標の入れ方に業界標準はなく、出版社や印刷会社で独自のルールを決めています。また同じ出版社でも、本の仕様によって異なる背丁・背標を入れることもありますが、いずれにして、目的は折り丁の他品目との識別と、乱・増・落丁の防止であることに変わりありません。

(1)背丁の入れ方

図表3 通常は品名、月号、巻数、折り名などを折り丁の最外側(背の部分)に入れますが、そのほかにも折り丁の最終ページの小口側版面外に挿入する「小口丁」と、折り丁のトップページの小口側版面外に入れる「天丁」があります。

図表4 またハガキやペラの口絵にも、類似品目混入防止のために背丁を入れるのが原則です。ハガキは表面の切り取り線に平行に、またペラ口絵の場合は平綴じではノドの部分、無線綴じではミーリング代部分、糸かがり・アジロ綴じ・中綴じでは糊代部分に入れます。文字の大きさに特別な規格はありませんが、通常9~12級ぐらいのゴシック体が使われます。

(2)背標の入れ方

図表5
① 背標vのパターン
一般的には図表5のような背標のパターンが多く用いられます。

図表6 ② 背標の大きさ
特に決まりはありませんが、ベタの幅は3~5㎜、長さは15㎜程度のものが多いようです。
背丁・背標とも平綴じや無線綴じでは、綴じ代に隠れて見えなくなったりミーリングで切り落とされたりするので、文字の大きさやベタの幅も大きめに設定されることが多いようです。これに対してアジロ綴じや糸かがりでは、本文を開いたときにノド元まで見えることもあり、背標幅は3㎜程度に抑えられるのが普通です。特に上製本の写真集や美術書では、背標幅を2㎜程度にしたり、場合によっては背丁・背標とも背に入れずに袋に入れることもあります。
背標の長さは折り丁数によっても変わってきます。一目で乱・増・落丁がわかるようにするのが目的なので、その目的に適ったパターンを品目に応じて工夫しなければなりません。
以上のように背丁・背標は製本工程での品質確保のために、極めて重要な役割を果たしています。背丁・背標があるからといって、絶対に事故は起きないという保障はありませんが、これがないと丁合いの載せ作業でのチェック、丁合い後の抜き取りチェックの二つのチェック工程が機能しなくなり、それだけ事故発生の確率が高くなりますので、必ず入れるようにしたいものです。