本文に束の出る厚い紙を使いたいのですが…
本文用紙として必要以上に厚い紙を使用した場合には以下のようなトラブルが発生します。
- ①折りじわが出る。
- ②背割れが発生し、バラ本になる。
本の大きさによっても異なりますが、A5判であれば四六/110㎏の紙は8ページ折りまでは可能ですが、16ページ折りにすると折りじわの発生が目立ってきます。絵柄によっては品質をかなり損ねる状態になるので、注意が必要です。また紙は一見柔らかなようでいながら、かなりの剛性(反発力)を持っており、とくに紙の厚みが増すほど剛性(腰)が強くなります。確かなデータはありませんが、経験的に紙の連量が四六/110kgを超えるあたりから紙の剛性がホットメルトの凝集力や粘着力を上回るようになり、背割れの発生とそれに伴う紙抜けの危険性が一挙に高まります。
四六/135kgを超える用紙を無線綴じした場合は、ほぼ間違いなくバラ本になることを覚悟しておかなければなりません。(「無線vs.アジロ…どっちが強い?」参照)
お客様の企画などで、どうしても本文に厚手の紙を使用するには、以下の三つの方法が考えられます。
- ①本文を糸かがりで綴じる。
- ②PUR(ウレタン系反応型ホットメルト)を使用した無線綴じにする。
- ③平綴じ(針金綴じ)にする。
①②の場合は、いずれも通常のホットメルトによる無線綴じの場合よりもコスト高になりますが、バラ本事故を回避することができます。但し、糸かがりの場合には、本文を糸で綴じた後、表紙をホットメルトで接着することになるので、本文や表紙に多色のインキ層があると、インキ溶剤でホットメルト層が侵され、表紙剥離事故を起こす恐れが出てきます。それに対してPURの場合にはそのような事故は起こらないので、より確実な綴じ方といえます。
③の場合には本のレイアウトが変わるなどの問題があるので、企画そのものの変更につながります。その本の用途や内容によって対処の仕方が異なりますが、上質系の用紙で文字ものが多く、しかも本の使用条件が毎日何回も開閉を繰り返すようなことのないもので、短期的用途(保存期間が短い)のものであれば、四六/135kgくらいの用紙まではアジロ綴じにしておけば一応目的に沿った本を作ることはできます。しかし、これ以上の厚紙や長期間の品質保証を求められる場合には、営業政策的な配慮から安易に得意先に妥協すると、かえって大きな迷惑をかけることになるので、上記①②の方法のいずれかを採用するよう、強く働きかけるべきです。