製本お役立ち便利帳

事前に計測したにも関わらず背幅デザインと実際の束が合わないのは何故ですか?

表紙やカバーの背幅は、本来「本紙による束見本」を実測して決めるものなので、背幅と束が揃わないことはないはずですが、実際には以下のような原因で不具合が発生することがあります。

  1. ① 束の寸法測定を間違えた。
  2. ② 用紙銘柄が変更された。
  3. ③ 本の束にバラツキが出ている。
  4. ④ 表紙またはカバーでくるむときの位置合わせは「片側合わせ」になる。

このうち①と②は全くの不注意で、気を付ければ防げる事故ですが、③と④の場合には少々厄介な問題があります。

まず③の場合ですが、実際に製本に携わる人以外には、ほとんど知られていませんが、大量に生産される本の束には、かなりのバラツキがあります。折り丁の結束の仕方、結束の強さ、パレットに積み上げたときに下部に積まれた折り丁か、あるいは上部に積まれた折り丁かなど、折り加工が終わった後の保管状態で、出来本になったときの束が変わります。上製本で糸かがりが終わった後で1~2日間パレットに積み上げておくと、パレットの上部と下部では30㎜くらいの束のもので1㎜強も厚みが違う場合が出てきます。

上製本ではあらかじめ表紙ができ上がっているので、表紙をくるんだときには外観上はわかりませんが、並製本の場合には表紙の背幅との不揃いとなって現れます。束が薄くなればこれほどまでの束の差は出ないにしても、1/10㎜単位でのバラツキは存在しています。

さらに④の問題ですが、表紙の位置合わせは「片側合わせ」で行います。本の束の中心に位置合わせをするわけではないので、束にバラツキが出た場合には、そのバラツキ分は背の両側に割り振られずに、基準辺の反対側にそのまま現れてきます。

以上のように、並製本では束見本を作って正確に束を測定し、それに基づいて表紙背幅を設定しても、束と表紙背幅が揃わないものが出てくることがあるので、表紙のデザインを検討する際には、

  1. ① 背幅がはっきりとわかるような線または色帯を入れない。
  2. ② 文字幅が背幅いっぱいになるような文字は入れない。
  3. ③ 色帯を入れる場合には、基準辺(通常表1側)の反対側が裏面に回り込んでもおかしくないようなデザインにする。あるいは束よりも広めの色帯幅にして、背の両側に色帯が回り込むようにする

などの配慮が必要になります。