製本用語集

まるみだし (丸味だし)rounding

<丸み出しの目的>台数の多い厚い糸かがり本は、背に丸みをつけないで平らにすると糸が本の背中で一直線に並び、背と小口のツカ寸法が極端にかわり、いびつな形になってしまう。背を丸くすることにより、背中と小口のツカを同じに近づけることができる。見開きもよくなり、厚い本としての体裁も丸背の方がなじめる。

<丸み出しの手順>

  1. 三方仕上げ断ちした中身をパラ検査して折れ込みや汚れなどを検出する。
  2. 1冊ずつ天地にクラフト紙または輪ゴムなどで帯掛けする。
  3. 帯掛けした複数の本を揃えて重ね積み、水を含ませた刷毛で本の背を塗らして仮固めのとき塗布した接着剤を軟らかくする。
  4. 本を裏返して前小口を軽く作業台に付き当て両手で本を抑える。
  5. 親指を本の中央部に当て、束の厚みの65%~70%程の部分を摘んでせり上げるようにして、そのまま手前に返して押しぎみに力を入れて手前に引く。
  6. 同時に親指以外の両手の8本の指で見返しを押さえる。左手はそのままにして右手にコツ(堅木の板)を持ち、背の部分を天地にこするようにして丸みの癖をつける。
  7. 本をもう一度裏返し、束の60%程度をつまみ上げながら、前と同じ方法で反対側に同じ曲線の丸みを出す。
  8. 丸み出しで最も注意すべきは、小口側の曲線の傾斜角度を15゚を目途の肉厚とすること。この肉厚が薄く貧弱な形のもの(つまり「ゾベリ」)は、バッキング機で耳出ししても耳の形を整えることができない。いずれ背割れの前兆であるひび割れになったり、巻頭の一折り部分の接着層が剥がれ易くなり背割れする。

<適当な丸み> は数値等では示されていないが、目安として何通りかの丸みぐあいが行われている。一つは、ツカの厚さを一辺とする正方形の外接円。その外接円の円弧がその本に適した丸みであるとする(図A)。もう一つの有力な考えは、ツカの厚さを一辺とする正三角形の外接円の丸みが適当(図B)というもの。このほかにもいろいろの考えがあるが、いずれにせよ厳密な、唯一の正解というものはありえない。出版社・担当者・装丁作家・著者等、注文主側の考えや、製本所の技術・経験によって「適当な丸み」は決められている。「丸み」は「半径・・・・・・mの円周」として高速道路等では示されているので、それにならって図Aと図Bの丸みを一応、数値化しておく。