製本用語集

クロスcloth

装丁用材料。織物を基調とした生地に染色加工を施し、薄紙で裏打ちした布クロス、染色した塩ビを生地に用いたビニールクロス、紙にラミネート加工やエンボス加工した紙クロス、あるいはレザークロス等がある。 メーカー ダイニック(株)、東洋クロス(株)、(株)望月書籍の装丁に布クロスが登場したのは19世紀の始め。イギリスのジェームズ・レオナルド・ウェルソンが布地に染色塗料を施して、皮革にかわる素材として考案したと伝えられる。当時のイギリスは世界中で最も多くの書物が出版されていた。それ迄の装丁材料は羊・山羊・牛などの原皮をなめして使っていたが、高価で作業に手間がかかり、革の生産にも限界があって大量出版の需要に応じきれなくなっていた。産業革命の時期で印刷製本の技術とともに機織(はたおり)技術の発達もあずかって、布クロスの発明が促された。当初のクロスは素材が粗く箔押しに適さないため、文字や飾り模様はあらかじめ革や紙に箔押ししてから表紙に貼った。わが国では、アメリカで布クロスの製造技術を学んだ坂部三次が京都で製本用クロス製造の日本クロス工業(ダイニック(株)の前身)を設立、また、時を同じくして大角卯之助が京都にて東洋クロスを創業したことに始まる(1919年)。現在では、書籍の装丁だけでなくビジネスサプライ・壁紙等インテリア素材・事務用品・日用雑貨・装身具にまでクロスの用途は拡大している。