民間商取引の知的財産取り扱いを調査

製造業で無償譲渡などの実態明らかに

 公正取引委員会はこのほど、『製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書』を発表した。
 調査の結果、回答企業からは、「ノウハウの開示を強要される」「名ばかりの共同研究を強いられる」「特許出願に干渉される」「知的財産権の無償譲渡を強要される」といった多数の事例が報告された。この中には中小企業だけでなく、大企業やベンチャー企業からの報告もあったという。
 調査結果を踏まえ、公正取引委員会では、①経済産業省・特許庁と連携し、製造業全体に参考事例集を含めた調査結果の周知、②引き続き優越的地位の濫用行為等の情報収集に努めるとともに、違反行為には厳正に対処するなどの対応策を打ち出している。
 印刷業界の知的財産権の取り扱いについては、現状、官公需の契約または使用者の多くが、印刷物の著作権について無償譲渡を求めるか、取り扱いが不明確になっている。著作権には複製権や公衆送信権が含まれるため特に大切な権利となっているものの、実態として価値化されていない。
 全日本印刷工業組合連合会はこうした状況を受け、平成27年度に全国規模で官公需アンケートを実施。翌年には、経産省のコンテンツ産業強化対策支援事業を受託して知財取り扱いに関する調査を行った。その結果を踏まえ、平成29年度に官公需法に定める、「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」の中に知財権の取り扱いについて、『財産的価値への留意』や『利用目的の明記』『コンテンツ版バイ・ドール契約の推進』が追記された
 今回の公取調査でも印刷・同関連業から11件の事例が報告されており、官公需だけでなく、民間の商取引の適正化が期待される。

イベント情報&業界ニューストップへ