官公需の知的財産権の実態を調査

著作物の無償譲渡が慣例化、複製利用などのトラブルも

全日本印刷工業組合連合会は、昨年9月に経済産業省から受託を受けた平成28年度コンテンツ産業強化対策支援事業(中小印刷産業の知財活用に関する調査事業)について報告している。
同調査は、官公需契約数が多い中小印刷会社においては、官公需契約における知的財産権の整理や取扱いに通じた人材の育成が急務であるとして、①印刷等の請負契約時に生じる知的財産権の取り扱い等についての調査・分析、②適切な契約時のあり方の整理、③中小印刷会社に対しての情報提供を目的に行われた。
「用紙等諸資材価格動向・官公需問題調査」によると、官公需における著作権の取扱いは、「殆どの場合、契約条件で無償の権利譲渡が求められる」という回答が5割を占める。印刷用データ等の中間生成物の取扱いは、「契約条件等で殆どの場合、無償で要求される」が47%、「時々、無償で要求されることがある」が29%となり、4分の3の企業が無償で要求されている実態が浮き彫りとなった。この結果を受けて、官公需取引率の高い中小印刷会社34社を全国から選定し、ヒアリングを行った。
それによると、全ての企業が著作権等の譲渡を求められたことがあり、料金については無償もしくは入札金額に含められている。あらかじめ契約書や約款に、著作権は発注者に帰属、あるいは無償で譲渡することがあらかじめ記載されているのが実態である。著作権を譲渡したことでトラブルもあり、過去に納品した印刷物を発注者が複製して利用するということも発生している。納品後の著作物の二次利用についても、契約書に記載されている通りの取扱いとなり交渉できないのが現状だ。
また契約書に「無償譲渡」という記載はあっても、著作権の使用料や買取といった記載はないということが明らかとなった。

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