出版社のBODサービス続々と
消費者ニーズに応えるとともに在庫リスク圧縮
東京都千代田区神田神保町の書店・岩波ブックセンターを経営していた信山社が11月25日、東京地裁から破産開始決定を受けた。これに伴い岩波ブックセンターも閉鎖することになった。出版取次を経由する出版市場は縮小の一途。11年連続のマイナス成長が続いており、下げ止まりの気配がない。一方、出版を取り巻く環境は大きく変化してきている。
インプレスは、インプレスR&Dおよび京葉流通倉庫と提携して、既刊書籍の在庫を小ロットで自動補充するシステム『ショートラン重版自動生産システム』の運用を開始する。また、PHP研究所は、本格的に書籍のプリントオンデマンド事業に取り組むことを発表した。POD書籍を販売するWebサイト「PHPオンデマンド」を開設し、同サイトを通じて、在庫を持たず、読者、著者からの注文に応じて1冊からの製本・印刷・出荷に対応するという。
すでに講談社や小学館は独自のブックオンデマンド(BOD)生産体制を築いている。出版会社が生産に乗り出す背景には、多様化する読者のニーズにこれまでの出版のあり方で対応しきれない現状がある。また、今までは適正な原価で重版するために1,000冊以上を印刷する必要があった。印刷した出版物は倉庫に眠らせ、必要に応じて出荷する。
こうした出版物は"出版取次"を通した統計に表れない。ブックオンデマンドの需要がこれから増えて行けとすれば、出版市場にとって喜ばしいことだ。一方、本離れが進んだ理由はなかなかニーズに応えられなかった提供する側、製造する側が引き起こしたことの証しにもなる。矢野経済研究所によると、2015年度の同人誌市場は前年度比2.4%増の775億円。出版物だが、これも統計に含まれない数字だ。ニーズを掴んだ出版物はまだ伸びる可能性がある。