自費出版ビジネスの再興
出版大手が個人出版で本格参入
日本グラフィックサービス工業会主催、日本自費出版ネットワーク主管の第17回日本自費出版文化賞の最終選考会がこのほど開かれ、大賞の「獅子頭書票集」(敦澤紀恵子氏著)が選ばれたほか、部門賞、特別賞が決定した。
優れた自費出版本にスポットを当てるこの文化賞は、出版不況にあって、堅調に応募数も推移している。審査委員長の色川大吉氏が「大手出版社から発行されるものが必ずしも素晴らしく、名著であるとは限らない。自費出版文化賞がなければ埋もれてしまう名著もある」と指摘する通り、時に自費出版だからこそ「本」という形になった名著も出てくる。
これまで自費出版の多くは、地域の印刷物を手がける印刷会社のビジネスとして定着してきた。自費出版の案件は一件、一件に顧客の思い入れが強い仕事になるため、手間の割に利益率が良くないといったイメージがあり、大手、中堅の印刷会社や大手出版社は興味を持っていなかった。それが少子・高齢化により、アクティブシニアと呼ばれる団塊世代をターゲットとした新ビジネスに注目が集まると、自費出版にもその関心が向き始めている。その傾向の表れとして、最近では小学館が全印工連やジャグラに対し、自費出版ビジネスの協力を呼び掛けるといった動きを見せている。また、文化賞に応募される作品の発行社も文藝春秋企画出版部や幻冬舎ルネッサンス、新人物往来社といった大手出版社から、朝日新聞出版、信濃毎日新聞社といった新聞社の名前が挙がっている。
出版社関連の自費出版ビジネスは、ある程度の冊数を発行する「個人出版」も視野に入れたものが多いため、一概に印刷業界のビジネスモデルと一緒にできないが、いずれにしても、アクティブシニアをターゲットにした個人需要の印刷ビジネスとして期待したい。