円安で色上質も値上げへ
印刷業のアベノミクスの効果はない?
印刷資材の値上げが進んでいる。
日本製紙は8月6日、8月21日出荷分から、封筒などに使われる色上質紙の10%以上値上げを発表した。製紙各社は今年3月、相次いで印刷用紙の値上げを発表。製紙会社の一斉値上げは東日本大震災後の2011月7月以来となっているが、じわりと印刷業者の経営にも影響し始めている。
日本製紙はすでに上質紙、上質コート紙、軽量コート紙、微塗工紙の市況品について15円/㎏以上の値上げを発表。王子製紙は20%以上の引き上げを表明している。代理店や卸を経由するため、値上げ分がそのまま価格が反映されるわけではないが、印刷単価が下がり続ける中での材料費の値上げは厳しい。
値上げ理由について各社は足並みを揃えなかったが、注目すべきはアベノミクスによる円安による原燃料価格の高騰である。2012年の紙・板紙合計の輸入量は円高を背景に、前年比6.2%増の222万トンと過去最高を記録。国内製紙メーカーは安価な輸入紙に押され、厳しい経営環境が続いてきた。
ところが一転してアベノミクス以降の円安は輸入紙の価格を直撃。印刷・情報用紙の輸入紙出荷量を見ると、今年1月から6月までの半期の累計で、前年同月比32.3%減と大幅に減少している。このタイミングでの値上げは製紙会社にとって絶好のチャンスとなったといえる。
インキメーカーもグラビアインキ、接着剤の値上げを発表した。一部のインキメーカーではこの秋からオフセットインキの値上げを表明している。また、アベノミクスの効果が実感できないどころか、逆風となっている内需産業。価格が転嫁しにくい状況のまま、原材料価格が上がれば収益の悪化を招く。印刷会社にとって、さらなるコスト削減が避けて通れない秋となりそうだ。