業界の動き【2013年4月】
胆管がんの関連性認める ◆厚労省
厚生労働省は3月14日、「印刷事業場で発生した胆管がんの業務上外に関する検討会」の報告書と今後の対応について発表し、胆管がんと化学物質との関連性を認めた。昨年3月、大阪府の印刷事業場の元従業員らが、胆管がん発症による労災申請を行ったことに端を発する「胆管がん問題」では胆管がんと業務における化学物質との因果関係が不明だったことから、同検討会で業務との因果関係が検討されてきた。その結果、「胆管がんはジクロロメタンまたは1、2-ジクロロプロパンに長期間、高濃度ばく露することで発症し得ると医学的に推定できること」、「大阪府の印刷事業場で発生した胆管がんは、1、2-ジクロロプロパンに長期間、高濃度ばく露したことが原因で発症した蓋然性が極めて高いこと」が示された。厚労省は、大阪府の印刷事業場の従業員らから請求のあった16件の労災申請を認め、大阪労働局に対し、事務処理を行い、3月中に決定を行うことを指示した。
労衛対策が改善 ◆日印産連
日本印刷産業連合会の労働衛生協議会は2回目となる「印刷業界の化学物質による健康障害防止対策実態調査」を実施した。調査結果によると、労働安全衛生関連法令(有機溶剤中毒予防規則、特定化学物質予防規則、がん原性指針) に該当する化学物質を含む製品を利用している企業は、前回調査の72%から48%と、洗浄剤等の切り替えが進んでいることが判明した。また、遵法措置については、換気装置の設置、作業環境測定の実施などそれぞれの項目についてほぼ倍の実施率に達していることが分かった。
化学物質防止対策のパンフ作成 ◆日印産連
日本印刷産業連合会は、印刷事業所の「化学物質による健康障害防止対策の取組」の強化を図るため、労働衛生協議会が中心となり、パンフレット「印刷事業所における化学物質による健康障害防止対策のポイント」を作成し、配布している。 有機溶剤中毒予防規則(有機則)への対応を中心に「健康障害防止対策基本方針」を実践する上での要点を取りまとめた。日印産連のホームページでPDF版がダウンロードできる。
作業環境管理を学ぶ ◆印刷工業会
印刷工業会・技術部会主催による管理者研修会が3月6日、日本印刷会館で開催され、椎野労働衛生コンサルタント事務所代表の椎野恭司氏が、作業環境管理について解説した。印刷会社従業員の胆管がん発症に伴う労災申請に端を発した労働環境の問題は、印刷工場の環境管理の現状が問われ、印刷業界内で受け止められている。講演では、原因物質を排除するだけではなく、使用する物質の性質と安全性を認識して使用する仕組みが必要であるとの立場から具体的な解説が行われた。
印刷用紙値上げへ ◆製紙各社
3月6日、日本製紙、7日に大王製紙が印刷用紙の価格引き上げを表明したのをはじめ、各製紙会社が印刷用紙の価格引き上げを相次いで発表した。値上げ対象となるのは、日本製紙の上質紙、上質コート紙、軽量コート紙、微塗工紙、大王製紙の塗工紙、微塗工紙、上質紙、北越紀州製紙の上質紙、上質コート紙、軽量コート紙、微塗工印刷用紙など。 改定幅は一律現行価格のプラス15円/㎏となる。4月21日出荷分から適用。
電力料金4月から値上げ ◆各電力会社
円安により燃料や原材料の輸入価格が上昇している。2月に電力会社10社が価格引上げを発表。今回の価格調整は、原料費調整制度に基づいて算定された平成24年11月から平成25年1月の平均原料価格を受けたもの。 また、関西電力と九州電力は経済産業大臣に対し、さらに値上げの申請を行っており、認可されると、関西電力管内の自由化部門(企業などの法人)で19.23%価格が引き上げられる。
電子出版権の新設支持 ◆日印産連
日本印刷産業連合会は、3月1日、日本経済団体連合会が2月19日付で発表した「電子書籍の流通と利用の促進に資する『電子出版権』の新設を求める」法改正の提言支持を表明した。出版物の海賊版については、著作権者である作家、個人が対処することが事実上不可能なことから抜本的な対策が求められている。 出版物の海賊版対策の必要性について印刷業界からは、有効な対策として電子出版物に関する出版権を設定し、公衆送信権や複製権を再許諾できるように出版権を拡大することを解決策として提案した。
競り下げに断固反対 ◆日印産連
日本印刷産業連合会は3月6日、茂木敏充経済産業大臣宛に、「競り下げ方式による競争入札」の導入に強く反対する意見書を提出した。意見書で、過当な価格競争による経営の疲弊を防止し、健全な入札制度実現のために各地方公共団体で導入が進んでいる最低制限価格制度、または低入札価格調査制度との齟齬が生じることへの懸念を指摘。 また、中小企業の経営の圧迫と、環境や労働安全衛生を含めた総合的な品質低下への影響を示し、地域経済の長期的な疲弊にも繋がるとして強く反対している。
機械設備で政策要望 ◆日印機工・日印産連
日本印刷産業機械工業会と日本印刷産業連合会は共同で2月28日、経済産業大臣に「産業競争力会議及び今後の政府施策に対する印刷産業界の要望について」を提出し、印刷産業としての政策要望を訴えた。要望書では「印刷産業機械、印刷産業に関わる企業が個々の事業や組織を見直し、 積極的な研究開発の推進等による国際競争力の強化をはじめ、国内での新たな需要を創り、設備投資を活発化して、地方経済の活性化や雇用維持・増加に努めることは喫緊の課題」として①平成25年度税制措置、②平成24年度補正措置、③新規要望項目の税制を中心とした3項目を要望している。
消費税軽減を要請 ◆書協、雑協ほか
日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版取次協会、日本書籍商業組合連合会の4団体は3月8日、書籍・雑誌・新聞(電子媒体を含む)の消費税軽減税率の適用を求める声明を発表した。 欧州ではいち早く付加価値税での軽減税率が導入され、特に2007年から「産業の保護」「文化政策」という目的に限って軽減税率を適用している。4団体は消費税増税によって、日本の将来を担う青少年の国語力の低下が指摘される中、子ども達が読書に親しむ機会が損なわれかねないと懸念を示した。
保険料率を改定 ◆全印健保
全国印刷工業健康保険組合は2月25日に開いた第152回組合会で、保険料率1000分の100への改定を含む平成25年度事業計画案などを承認した。保険料率の引上げは3年連続となる。平成25年度の保険料率を1000の2引き上げ、協会けんぽの平均と同等の1000分の100に改定する中間答申が提出された。
アカデミー発足へ ◆マーチング委員会
一般社団法人マーチング委員会の第2回全国大会が、2月22日、東京・湯島の東京ガーデンパレスで、総会、特別講演会、マーチング委員会セミナーの三部構成で開催された。総会では、新体制の発表があり、マーチング活動の普及推進機関「マーチングアカデミー」の発足と組織体制の改定が発表された。 それに伴い、これまで理事長だった利根川英二氏がマーチングアカデミーの塾長となり、新理事長に井上雅博氏(甲斐の国マーチング委員会)が就任した。
世界ラベルコンテスト ◆全日シール
全日本シール印刷協同組合連合会はこのほど、2012年9月10日、米国・シカゴで開催された第24回世界ラベルコンテストの入賞企業社を発表した。日本からはカテゴリー別に「凸版-線画」でナカムラ興業が、「凸版-線画と網点」で中国シール印刷が、「凸版-色分解」と「オフセット-ワイン・酒」でサトープリンティングが、「凸版-ワイン・酒」と「複合-色分解」でシモクニが、 「オフセット-色分解」で山田美術印刷が、「複合-線画と網点」でカンサイタカラインサツが、「デジタル-ワイン・酒」でタカヨシが優秀賞を受賞した。
印刷企業応援川柳を制作 ◆宮城工組
宮城県印刷工業組合マーケティング委員会は平成24年度事業として「印刷企業応援川柳」ポスターを作成し、このほど組合員企業・関係者に配布した。応援川柳は今回で3回目の取り組み。社員教育の大切さやお客様の大切さなど5つのテーマの川柳をイラストとともに印刷した。 今回は例えば「社員教育の大切さ」のテーマで「技磨き仕事の誇り身に染まる」などが選ばれた。監修は雫石隆子氏(河北新報・川柳選者)に依頼している。
世界の美しい本で銀賞 ◆魯迅の言葉
第46回造本装幀コンクール(2011年/主催:日本書籍出版協会、日本印刷産業連合会)で、日本書籍出版協会理事長賞文学・文芸部門を受賞した『魯迅の言葉』(平凡社)が、このほどドイツの「世界で最も美しい本コンクール」で銀賞を受賞した。 同コンクールは、1963年にドイツ・ライプツィヒで始まり今回で50回目を迎える。各国のブックデザイン賞の入選作品が審査対象となり、今回は32か国575作品がエントリーした。