出版の新たなビジネスモデル模索

取次・流通の変革始まる

 出版科学研究所が発表した「2017年 出版物発行・販売概況」によると、紙の出版物販売額は6.9%減の1兆3,701億円と13年連続で減少した。出版不況の稼ぎ頭となっていたコミックスも前年比14.4%の大幅減となった。
底が見えない出版業界にあって、出版社は、印刷工場の内製化によるオンデマンド出版や電子書籍、さらには全く異なるビジネスの柱を作るべく、業容を拡大させている。こうした動きの中、書店と出版社を結び、日本の出版流通の中核的役割を果たしてきた出版取次は、大きな岐路に立たされている。
一般紙の報道によると、アマゾンジャパンは取次会社を通さずに書籍や雑誌を印刷会社から直接取り寄せる動きを加速させるという。出版社との直接取引はスタートしていたが、印刷会社からアマゾン限定本や既刊の小ロット増刷は直接仕入れる。今後どれだけの需要が見込まれ、出版社にもメリットをもたらすかで、定着するか否か動向が注目されるが、こまでの出版流通の構造に一石を投じたことになる。
取次会社も「取次外し」に手をこまねいているわけではない。日本出版販売(日販)は1月に東武鉄道が所有する東武ブックスの株式すべてを含む発行済み株式の83.3%を取得し、連結対象子会社とした。取次会社による書店株式の取得は一つに取引き先の塗り替えがメリットとなる。2016年には大日本印刷から文教堂の株式を取得して筆頭株主になり、2大取次と言われるトーハンの取引を獲得した。一方で書店の株式取得は、新たな書店ビジネスを構築していく側面もある。東武ブックスの株式取得に際し、日販は駅立地での販売ノウハウを持つ東武ブックスと、書籍・雑誌の販売をより効率的に行い、新たな商材・業態を提案していくことで新たな書店のモデルづくりを目指すという。

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