働き方改革を進める上で問題となる懸念材料

短納期発注への影響、下請け業へのしわ寄せなど

今後、中小企業・小規模事業者が直面する「働き方改革」や「残業時間上限規制」への不安、あるいは懸念、課題などを抽出するため、中小企業庁では聞き取り調査を行い、働き方改革を進める上で問題となる「商慣行」や「しわ寄せ」の事例についてまとめている。
それによると、製造業やIT業界における業務に関する様々な懸念が上がっている。「短納期発注」への対応や、北海道・東北地方などの夏場の建設・土木事業や冬場の除雪作業、旬の食材を加工する食品製造業など特定の季節に集中する業務への懸念、製造業における過度なジャストインタイム納入の要求、IT業界における急な仕様変更などの商慣行に起因する懸念、建設・土木業や印刷業、建設資材・防災関連製造業、システム等ITベンダー業など官公需が多い業種では、納期や竣工期間の特定時期に集中する懸念などがあった。
納期発注への懸念では、すでに短納期発注が常駐化しているケースがあり、働き方改革を推進することでさらに拍車がかかるという声もある。ほか、中小零細下請企業は、大手取引先からの発注状況次第で、どうしても残業が増加する傾向にあり、短納期発注や受注時期の偏在なども懸念材料に挙げられている。加えて、情報サービス業者などは、納品の前日に仕様やデザインの変更を要求され、徹夜を余儀なくされることもあるという回答も出ている。
また、大企業の働き方改革のしわ寄せに対する懸念では、外注や下請けへの作業の増加、検収などの受領態勢の不備、短納期発注の増加などがある。官公需についても、国や地方公共団体の公共調達において、納期や竣工時期が年度末などの特定期に集中することで、残業時間が増えるという懸念の声も多い。一方的な働き方改革ではなく、全ての人が享受できる制度や仕組みづくりが問われている。

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