電通・就労問題が印刷業にも波及

働く環境の整備求められる

広告代理店の電通の女性社員が12月に過労自殺し、昨年9月に労災が認められた問題で、従業員の働く環境が注目されている。少子高齢化の対策として掲げられる女性活躍推進や介護休業等の法整備が進む中、実態として大手企業でも働く環境の改善がなされていないことが明らかになった。
電通に限らず、残業や休日出勤に対する手当は多忙を理由に希薄になりやすい。大手広告代理店の過重労働が問題視される中で、こうした労働環境に対する目が厳しいものになっていくことが予想される。
中小企業も例外ではない。労働基準監督署は今回の事件を機に、大手だけでなく中小企業にも厳しい目を光らせており、11月に福岡の印刷会社が労働基準法違反で書類送検された。本来、適正な労働時間等、法令順守は基本的な経営として守られているものだが、見なし残業など不確定な設定は社員の不満も表出しやすい。
労基署が入る前に対応できていなかったものは手を打つ必要があるが、その費用もそれなりの額に上ることもある。これまで労基を守っていなかった企業の場合、大きなツケが回ってくることが予想される。
残業の削減や育児・介護休業は企業の負担として捉えられるが、社員のモチベーション向上による生産性や利益率アップの成果を生み出している企業はたくさんある。まず疑問に持つべきは、今の働く環境が労働に見合った利益を創出するものなのか。薄利多売を続けると利益率が悪いにもかかわらず忙しいという悪循環に陥る。負のスパイラルから抜け出すためのツールとして、業界団体ではモデル就業規則などを作成している。こうしたものを活用し、改めて働きやすい環境を整えることで、各社の利益率と生産性向上につなげてもらいたい。

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