2018年度に準備金枯渇の恐れ

国庫補助率引き上げか賃金増で回避へ

全国健康保険協会(協会けんぽ)は第56回全国健康保険協会運営委員会で2014年度(平成26年度)から2018年度(平成30年度)までの収支見通しを発表した。協会けんぽの収支見通しは、総報酬額が①低成長ケース×0.5、②0%で一定、③過去10年間の平均で一定の3つのケースで仮説を立てて算出。①②のケースで推移した場合、収支差では減少するものの準備金を確保できるが、③のケースの場合、2018年度に準備金がマイナスとなる恐れがあるという。
協会けんぽは3,600万人が加入する日本最大の医療保険だが、医療費等の支出の伸び率が賃金の伸び率を上回る赤字構造となっている。協会けんぽの財政問題は、一保険者の問題に留まらず、中小企業の経営や従業員の雇用、生活に直結する深刻な問題となる。そこで協会けんぽは、厚労省に対し、国庫補助金の補助率の健康保険法本則上限の20%引き上げと、高齢者医療保険の見直し、後期高齢者支援金の被用者保険者負担について全面総報酬割を導入し、それによって生じる公費財源を協会けんぽの財政基盤の強化等被用者保険の負担軽減に充てて欲しいとの要請を提出している。
健康保険組合については、全国印刷工業健康保険組合も平成25年度に収支差10億円以上の赤字という危機的な財政状況に陥っている。現状を打開するため、全印健保は来年3月に支部事業所を協会けんぽに移管し、財政の健全化を図ろうとしている。
このような健保運営の財政悪化は、高齢者医療制度に拠出する負担を一番に上げる要因となっている。全印健保も行政に対し、制度そのものの抜本的な見直しを求めているが、解決の糸口が見えない状況が続いている。国民の保険を支える健保の財政破たんは、中小企業の労働環境に大きな打撃を与えかねない。

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